メイン写真 メイン写真

2025.03.26

AND ARCHI

開く設計を体感する

「開く設計」について、今回は少し掘り下げてお話してみたいと思います。

住宅設計において、周囲の環境をどう活かすか。これは設計の初期段階における最も重要な視点の一つです。都市部の住宅密集地においては、どうしても隣家が迫っていたり、目の前が道路だったりという状況が避けられないことが多くなります。そうなると、「閉じる設計」、つまり外からの視線や騒音を遮断し、室内のプライバシーを守ることを第一に考える必要が出てきます。

しかしながら、閉じることを優先しすぎると、今度は内向きすぎる住まいになってしまいます。光や風が入りづらくなり、室内が暗くなってしまったり、空気がこもったり、さらには心理的にも圧迫感のある空間となってしまいかねません。そういった「閉ざされた印象」は、物理的な設計の問題にとどまらず、暮らしそのものの質を左右する大きな要素でもあるのです。

では、どうすれば良いのか?その答えが「開く設計」にあります。「開く」というのは、単に窓を大きく取るという意味ではありません。周囲の環境を丁寧に読み取り、どの方向にどのような風景があり、どこから光が入り、どの方向から風が抜けるのか。そういった敷地の情報を精緻に読み解きながら、開くべき方向に向けて適切な「開口」を設ける。つまり、「開くべき方向に、開く」ということなのです。

たとえば、南側に隣家が迫っていて日差しが期待できないなら、あえて中庭を南に設けて内側に開くという設計。あるいは、北側に緑地があるなら、プライバシーを確保しながら借景を楽しむために、大きな窓を北側に設ける。あるいは、空に向かって開く、つまりトップライトを取り入れて、柔らかな光を室内に落とすという方法もあるでしょう。

また、「開く設計」は、視線のコントロールにも関わります。外からは見えないけれど、中からは視線が抜ける。そんな絶妙な窓の配置は、まさに設計者の力量の見せどころ。視線の抜けと光の取り込みを両立する開口部をどう設けるかによって、同じ広さの空間でもその印象はまったく違うものになります。

「開く設計」とは、住まい手にとっての「開かれた暮らし」をどう形にするかという問いでもあります。自然に対して、そして街に対して、あるいは隣家との関係性に対して、どう自分たちの暮らしのスタンスを示すか。それは設計の問題であると同時に、生き方の選択でもあるのかもしれません。

住宅が単なる「箱」であった時代から、「場」としての意味を持ち始めた今、設計者は単なる機能性やデザイン性にとどまらず、暮らしの在り方そのものに踏み込んでいくことが求められているのだと、私は思います。

開きすぎず、閉じすぎず。光と風と視線とプライバシーの絶妙なバランスの中で、自分たちらしい「開く設計」を手に入れる。そのプロセスこそが、建築家とつくる家づくりの醍醐味なのです。

さて、そんな「開く設計」を実践したモデルハウスの内覧会を開催しています。詳しくは以下のURLよりご確認いただけると幸いです。

https://www.moriken.jp/events/so-model_2504.html

Editor

君島 貴史 Takashi Kimijima
andARCHI(アンドアーキ)編集長

1975年東京生まれ。横浜を中心に150棟以上の建築家との住まいづくりに携わる。デザインと性能を両立した住宅を提案し続けています。「愉しくなければ家じゃない」をモットーに、住宅ディレクターとWebマガジン「andarchi」の編集を行っています。