「2間幅の設計」
2間とは建築のモジュールで、1間が1820㎜の長さであるため、この建物の幅は3640㎜となる。敷地の間口が狭い上に、隣地の家がギリギリまで迫っている。狭い間口の設計を、どのように設計で解いていくかが最大のポイントだった。戸高氏の土地の見方が、狭小をデメリットとしない設計を導き出す。
建築家と建てる家は、可能性を広げる住まい設計。
難しい敷地条件、難易度の高い要望に対してあきらめることなく、むしろメリットと捉えて設計と向き合う。MORIKEN HAUSは楽しくなければ家じゃないと思っています。建築家との家づくりがエンターテイメントとして感じてもらえるようアテンドする。そして建築家は、知識と経験を総動員して答えを導き出していきます。
設計をするということは、住宅設計はもちろん、家族の暮らしの時間も設計していくこと。子育て環境はどうか?週末の暮らし方はどうか?地域との付き合い方はどうか?将来の家族のカタチはどうなるだろうか?様々なアプローチを重ね答えを導き出していく。そして、建物はサスティナブルでなくてはならないと思っています。家族の住んでいる時間が記憶として残っていくように、その場所に存在し続ける建築物として価値を残していきたい。
2間とは建築のモジュールで、1間が1820㎜の長さであるため、この建物の幅は3640㎜となる。敷地の間口が狭い上に、隣地の家がギリギリまで迫っている。狭い間口の設計を、どのように設計で解いていくかが最大のポイントだった。戸高氏の土地の見方が、狭小をデメリットとしない設計を導き出す。
2間幅の狭小な立地。設計として答えが出しやすいのは2階リビングだろう。しかし、戸高氏は1階リビングの設計に挑んでくれた。道路側が南だが、建物正面のファサードは窓のないシンプルなデザイン。1階リビングの光の入り方をどう解決したのかが興味深いプロジェクトとなった。
玄関を入ると、ガラスで緩やかに仕切りながらリビングにつながる。リビングの奥が、今回の設計のメインとなるダイニングスペースだ。ダイニングスペースは敷地の置く側にゾーニングされているが暗さを感じない。その答えは、中に入るとすぐわかる。
ダイニングスペースの両サイド壁は、1、2階とも大きな窓を配置されていた。両サイドは隣家の壁が迫っているのに、あえて大きく開いた。戸高氏は、設計前の現地調査の際、迫っている隣家の壁が嫌なものだと感じていなかった。プライバシーを阻害される窓もほとんどなく、むしろ隣家との間を通して反射光が入ってくると判断した。
隣の壁はあまり見たくないという心理は働きそうだが、実際にダイニングに身を置くと、とても良い環境だということがわかる。隣の壁がいい感じにノスタルジックな雰囲気を感じさせてくれる。決してきれいな壁とは言えないが、何とも言えない味わいがある。壁は近いが隣地からの圧迫感も無く、返って隣地の壁までがリビングだと感じる。通常よりも迫っていることが逆の効果をもたらしているようだ。
隣家との狭い空間もよりインテリアに感じるための工夫が「グリーン」。グリーンの提案も私たちのシゴト。窓の外と内に緑を配置すると、空間の質感がグッと上がる。外の空間がより内部空間と感じることができるのが不思議だ。建築自体には決して装飾しすぎることなく、ガーデニングや観葉植物の活用によってアクセントと視線の広がりをつくっていく。戸高氏は、最後のアクセントまでもイメージしながら空間設計をしている。
戸高氏は階段の位置をダイニングスペースの横に配置した。一旦、キッチンの手前まで来てから上がっていくという家族の導線に配慮した。しかし、階段をダイニングスペースに隣接させた最大の理由は、採光。階段の吹き抜けとダイニングの上の吹き抜けを2ヶ所設けることで開放性と明るさを確保した。2か所の吹き抜けができることで、2階の廊下が橋のような形となった。
戸高氏は、2階の廊下幅を広くしスタディスペースを兼ねることとした。これによって、2階の廊下がセカンドリビングのようになり狭小の家であるものの居場所がたくさんある住まいとなった。
2階の南側にはバルコニー付の寝室を設けた。大通りに接続する前面道路は交通量がそれなりにある。しかも、道を挟んだ畑は、宅地開発され住宅が多く立ち並ぶことになっている。外の喧騒と緩やかに仕切りながら外空間をつくることを狙っている。道路側には開口部を設けず、空に向かって吹き抜け空間をつくった。これにより、内部空間として感じられる外の空間がつくりだされた。いわゆる半開き空間。外にも関わらず、落ち着いたこもり感のある心地よい空間となった。
土地はいつも満足する広さを確保できるとは限らない。しかし、設計という技術で不利な敷地条件でもメリットに変えられることを証明したいと思っていた。
MORIKEN HAUSは、建築の可能性を住み手に提供したいと考えています。その一つの答えの出し方が「間口2間の挑戦」なのです。土地のパフォーマンスを活かすこと、家族の要望を満たすことがMORIKEN HAUSのシゴトとなります。